今井・高嶋の千思万考「あきらめない熱意、雪より高く」

2017/01/01
社会保険労務士としての倫理とは【今井】

 あけましておめでとうございます。

 昨年もたくさんのお客様と関係者の皆様に支えられ1年を越すことができました。本年も昨年以上にお客様のお役に立てるよう、スタッフ一同努めて参ります。

 昨年末に、全国社会保険労務士会連合会より、社労士の倫理についての冊子が届きました。「厚生労働省のモデル就業規則は危ない」「従業員の辞めさせ方教えます」「社会保険料の削減方法があります」など、社会保険労務士としての倫理に欠ける情報発信について懲戒処分等も辞さないとの内容が含まれていました。

 その中には、厚生労働省や国の政策の意向に従うべきと曲解しかねる内容に読める部分があるように私は捉えました。

 私は社会保険労務士として、法律の専門家として、国や厚生労働省の政策に対しても、お客様や関係機関、関係者に対しても独立した立場で公正な判断が求められるべき立場であって、日々難しい判断を適切に行うために知識や経験を積み、お客様の期待に応えるべき仕事であると捉えています。あたかも国や厚生労働省を批判することは許さないともとれるその内容は、社会保険労務士の独立性を損なう恐れすら覚えるものと私は感じました。

 例えば、厚生労働省のモデル就業規則についても具体例として掲載されていましたが、それ自体は別に問題があるわけではありませんが、小規模零細企業において労務管理が進んでいない事業所に即導入できるかと言えば、難しいケースも多いと私は考えます。一方で、これ自体も一サンプルに過ぎず、そのまま各企業様で使用できるような作りにもなっていません。
 すべての事業主が就業規則の中身をきちんと理解できるのであれば、そもそもモデル就業規則など必要ないわけで、その中でも削除してよい項目もあれば、自社の実態にそぐわない内容が含まれる可能性もあります、それらに対する十分な説明や理解を促さないまま使用することは危険であると説明するのは当然であり、むしろ厚生労働省自らがそこまで注意喚起を行うべきであると考えます。

 また、厚生労働省のモデル就業規則に対する批判的表現と、社員を辞めさせる方法を指南する旨の表現とを同じ問題として取り上げる社労士会も含めて、今回の対応に疑問を感じます。

 私は、国の政策であってもそれ自体に問題を含むことや意図しない結果につながっている実態も見てきています。そういったものが含まれているにも関わらず、お客様に伝えないとのはそれこそ社労士の倫理として問題であり、お客様の信頼を損なることにもつながると捉えています。
 国や厚生労働省から指導が出るまで動けないような社労士会も対応の遅さや自分たちで責任を負おうとしない姿勢が表れている証拠とも取れるのではないでしょうか。

 インターネットで検索すれば、今現在も「従業員を辞めさす方法」などを謳ったサイトが多数ヒットします。社労士会もどの程度現実的な指導であると考えているのか、疑問です。

 社会保険労務士として、職業倫理は高いものを求められるのは当然で、そうでない方々が社会保険労務士としてなぜ業を行い得るのか、なぜそのような営業活動や表現を用いてしまうのか、よく検証されたのでしょうか。

 私は以前より倫理に欠如した社労士の問題はいずれ大きくなることを予測していたし、私が所属する北海道会の会長にも進言したこともあります。試験にさえ合格すれば誰でもなれる資格ではありますが、あまり敷居が低いのも問題ではないでしょうか。
 一方で、私も新人であったころは、当支部の大先輩の先生方に多くのことを学びました。その中には社労士制度ができてから数十年間誠心誠意業務に励み、業界を支えてきた先輩たちがいたからこそであると理解しましたし、自分たちがそれを担う世代になりつつあると考えればこそ、今回の倫理に関する一連の事柄は大変遺憾でならないところです。

 社会保険労務士の専門性は、これからより必要とされ高度になっていくでしょう。国の政策の実現にも社会保険労務士の存在は必要不可欠であると考えます。一方で、我々は公務員ではないし専門家として高い倫理意識をもち、公正であれば独自の理論を持つことも、時として政策を批判することも、国民や事業主の皆様から期待されている、と私は捉えています。

 高い専門性を力とするならば、倫理なく力をふるうことは暴力というべきではないでしょうか。一方で力のないものが正論を振りかざすのは無責任といえます。
 私はそのいずれであってもいけないと思うのです。
 

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